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顧客事例

株式会社オークネット・アイビーエスの導入事例:自社の抱える膨大な情報資産を AI 活用で“金の卵”に

2017年5月31日
Google Cloud Japan Team

Vision API、TensorFlow、Cloud ML、近年特に注目度の高い AI テクノロジーの活用事例を紹介します。30 年を越える情報流通事業で蓄積したビッグデータを、AI を駆使した独自システム「Konpeki」で有効活用した株式会社オークネット・アイビーエスの描く未来について伺いました。

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株式会社オークネット・アイビーエス
クラウドビジネス推進部
統括 GM
黒柳為之さん(写真右)

大橋秀紀さん(写真左)

■利用している Google Cloud Platform サービス
Google Cloud Vision API、Google Cloud Machine Learning、TensorFlow

株式会社オークネット・アイビーエス
中古車、バイク、花卉、ブランド品などの関連事業者向けオークション流通支援業を営む、株式会社オークネット(2017 年 3 月 29 日に東証一部上場)のシステム開発部門を分社する形で 2015 年 1 月に設立。最先端テクノロジーを駆使した IT プラットフォームをグループ内外に提供する。なお、社名のアイビーエスは Innovative Business Solution の略。

発想のきっかけは「AlphaGo」?

Web テクノロジー・クラウドソリューションを活用した新たなビジネススキームを生み出すべく、2015 年 1 月に株式会社オークネットから分社・独立した株式会社オークネット・アイビーエス。オークション事業で長らく培ってきたリアルタイム Web 技術に加え、今後、ますます重要度が高まっていくとされる、AI、IoT、そしてビッグデータ技術を事業の柱として、さまざまなチャレンジを行っています。

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2016 年 10 月にサービス提供開始した、車両画像識別システム「Konpeki(紺碧)」もその成果の 1 つ。オークネットが約 30 年に渡って蓄積してきた車両取引のビッグデータを元に、写真から車名や型式を割り出し、また、その写真が車両のどの部分を写したものなのかを判定する機能を実現しています。今回は、その開発背景から導入後の効果、そして今後の展望について、同社クラウドビジネス推進部を率いる統括 GM 黒柳為之さんと、その指揮下で開発チームを率いた現場導入リーダーである大橋秀紀さんに伺いました。

「まず前提としてあったのが、オークネットが保持する膨大な情報資産をどうにかして有効活用できないかということ。オークネットでは年間約 400 万台の中古車流通を扱っているのですが、当時はそれを上手く活用できていなかったのです。これを金の卵にかえられないかということをずっと考えていたのですが、ある日、『AlphaGo(アルファ碁)』が盛り上がっているのを見て、AI を使えば何かができるのではないかと閃めきました。その後、社内でビッグデータ× AI の活用法を検討していく中で、TensorFlowGoogle Cloud Vision APIを使った車両画像識別システムを開発することになりました。」(黒柳さん) そうして2016年1月から Konpeki の開発がスタート。当時はまだ具体的なビジネス活用を想定していない実験的なプロジェクトだったそうですが、それゆえにいくつかのチャレンジを心がけたと言います。1 つは、解析する画像(オークション出品社が撮影した車両写真)に手を加えないこと。そしてもう 1 つが学習と評価の自動化です。 「両者に共通しているのは、運用において余分な処理を増やさないこと。例えば再学習の結果を人手で検証してしまうと、膨大なコストが発生してしまいます。画像収集からモデル作成、評価、反映までのサイクルを完全自動化することで、費用をかけずに日々追加されていくオークション車両画像を取り込んだ最新判定モデルを維持できるようにしたかったのです。」(黒柳さん)

とは言え、そこに至る過程ではやはり人力に頼らざるを得なかった面も。まず苦しめられたのが、教師データとなる取引情報のクレンジング。いかに大量のデータがあるとは言え、それら全てをそのまま投入したのでは正しい結果は生まれません。総計1億件以上にも及ぶ、文字通りのビッグデータを正確に仕分けしていく作業がとにかく大変だったと言います。その後も、効率的に車種・型式を判別するために最適なアングルの検証など、開発初期はひたすらにトライアンドエラーの繰り返しでした。

「それらについての目処が立った後には、学習スピードの向上が大きな課題となりました。取引情報には 1 つの車両当たり数点から十数点の写真が含まれているのですが、この処理が追いつかなくなってしまったのです。例えば 3 万枚の画像データをローカル環境の TensorFlow で処理しようとすると約 1 週間かかってしまいます。オークネットでは年間約 1,200 万枚の車両写真を蓄積しているので、これではどうやっても終わりません。そこで、2016 年 10 月頃、Google さんからの勧めに応じて、まだβ版だったGoogle Cloud Machine Learning(Cloud ML)を導入。並列処理をすることで、爆発的に処理速度が向上。あっという間に学習を完了させることができました。」(大橋さん)

「自動車」という枠を越えて、さまざまな業界への展開も開始

当初はビジネス活用の具体的なプランがなかったという Konpeki ですが、昨年 12 月、たまたま同じオフィスビルに入居していたという縁から、ランドクルーザー、ハイエースに特化した新車・中古車販売会社フレックス株式会社への導入が決定。フレックスでは、それまで買い取りした中古車の車両画像を手作業で分類・登録していたのですが、これを Konpeki で自動化できるのではないかと考えたのです。

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「こうした画像認識は Konpeki の最も得意とするところ。これまで 20 分前後かかっていた作業が一瞬で終わるという時間的メリットに加え、手作業ではどうしても避けられないミスを防げること、これまで主観に頼っていた分類を AI が統一的に処理することなど、フレックスさんの業務上の負荷を軽減することができました。」(黒柳さん)

この成功を受けて、Konpeki は今後もさまざまな業務に拡大予定。ユニークなところでは、その高精度な車両画像識別技術を活かして、交通量調査に使おうという計画があるそうです。また、一般消費者が目にするところでは、流行りの LINE 査定での利用も視野に入っているのだとか。さらに、オークネットが保持する自動車以外のビッグデータを学習させた、他ジャンル向けの Konpeki 派生バージョンも開発開始。既に、ブランド品に特化した「Konpeki for Brand」が提供開始されています。

「今回、Konpekiで得たノウハウを元に、ディープラーニングを利用した汎用の画像識別システム構築用プラットフォーム『Kogane(黄金)』を提供開始しました。社内に活用できていない画像情報資産を抱えているというお客さまに活用していただけるとうれしいですね。もちろんそのためには、我々も苦労させられたビッグデータを正しく活用するための仕分けなども必要になるのですが、そういうお手伝いも含めてサービスを展開していきたいと考えています。」(黒柳さん)

実績を重ね、Google Cloud Next などのイベントでの講演を繰り返していく中、最近ではこれまで付き合いのなかった業界からも Konpeki や Kogane に関する問い合わせが増えているとのこと。

「そうしたお付き合いの中からヒントをいただき、現在は、食料品などの検査に Konpeki で培った技術とノウハウを活用できないかを模索中しています。具体的なことはまだお話できる段階にないのですが、食材の外観を分析することで、品質や安全性を判定する仕組みを作っていこうと考えています。食べ物の場合、自動車やブランド品などと異なり、一定以上悪いところがあると売り物にならなくなるなど、これまでとはロジックを変えなければならないのですが挑戦する価値はあると思っています。」(大橋さん)

「現在、食品検査の世界はライン上に高額なカメラを配置して都度、専用に設計したロジックで分析を行っているのですが、それを AI で置き換えられるんじゃないかと思っています。機械学習を駆使すれば、どんどん賢く、正確になっていくので、従来のように新しいことを始めるたびに改修するコストがかかりません。上手くはまれば、食品検査を新しい次元に持って行けるんじゃないかと思っているんですよ。」(黒柳さん)

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