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顧客事例

日本生命保険相互会社の導入事例:本部主導の出店戦略を、営業拠点自らが考えられるように進化

2017年7月3日
Google Cloud Japan Team

日本最大級の生命保険会社である日本生命保険相互会社(以下、日本生命)は、2017 年 5 月、Google Maps APIs および Google App Engine を活用した出店戦略システムを国内 99 支社、1,500 以上の営業拠点から利用できる環境を整えました。従来、本社主導で判断していた出店戦略を、現地の支社営業拠点が主体的に考えられるように進化。今後、より有効な出店戦略に繋げていく構えです。

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日本生命保険相互会社
業務部 副主任 柏木綾人さん(写真左)
個人保険システム部 課長補佐 齊藤悠介さん(写真右)

■ 利用しているサービス
    Google Maps APIs
    Google App Engine

日本生命保険相互会社
1889 年創業の生命保険会社。保有契約高および保険料収入で日本最大規模を誇る。連結で 70 兆円以上の総資産を有する国内最大規模の民間機関投資家でもある。不動産賃貸業(貸しビル事業)においても所有床面積で国内 3 位の規模。2017 年 5 月現在、支社など 108 か所、営業部 1,537 か所、海外事務所 4 か所、従業員数 70,519 名。

集客や採用において極めて重要な営業拠点の立地

日本生命の営業拠点には、来客スペースのあるタイプと、営業職員のオフィスだけのタイプがあります。営業拠点の立地は、集客のしやすさや営業職員の採用において重要な要素です。

「お客様にお越しいただく拠点は、駅前などの人が集まりやすい場所が良く、一方、営業職員の採用においては、住宅地から車や自転車で通いやすいロードサイドが良いといったように要件が異なります。適切な営業拠点を設けることは当社にとって最重要課題ですので、たとえば、該当エリアに競合他社の拠点がある場合、集客や職員採用の両面で優位になるための拠点を構える必要があります。」と当該業務を司る業務部副主任の柏木綾人さんは言います。従来、こうした新規出店や拠点の移転は、 年に 数回、現地の要請に基づき本社が現地情報を収集し、判断していました。その判断材料には、人口動態や世帯収入などの統計情報をはじめ、顧客情報や営業職員状況、実績などの社内情報があります。

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「それらに加えて、実際に我々が現地に赴いて周辺状況を確認することもあります」と柏木さん。しかし、日本全国に 1,500 以上の営業拠点があり、地域特性も異なります。さらに、新規出店や移転に伴い、近隣の営業拠点と顧客をどのように分担すればより効率的かといったテリトリー戦略も必要です。これらの複雑な要素を踏まえ、本社が的確に判断することには限界があり、手間やスピードにおいても問題がありました。

「以前より、営業拠点からエリア内の競合情報などの照会が本社に寄せられていました。そこで、システム化を検討することになり、社内システムの開発や運用を担う個人保険システム部に話を持ち掛けてみたのです」(柏木さん)

2016 年の 1 月頃、業務部から相談を受けた個人保険システム部はさっそく検討を開始。
「出店場所やテリトリーを決めることが目的なので地図情報システムは欠かせません。そこで、地図といえば Google Maps だろうとすぐに方向性は固まりました」と個人保険システム部課長補佐の齊藤悠介さんは言います。また、新システムは全国の支社に導入することを目指していたので、ユーザーの使いやすさも重視しました。その結果、自ずと Google Maps  の採用に至ったわけです。そこで、システムの開発を進めるため、齊藤さんらは同年 4 月頃に株式会社トップゲートに相談をもちかけました。

要望が随時カタチとして確認できる”アジャイル開発”に驚き

「トップゲートさんの開発プロセスは、我々にとって驚きの連続でした」と齊藤さんは当時を振り返ります。それまで、個人保険システム部が開発を手掛けてきたシステムは、用途や目的が明確で機能要件も明らかな、ぶれのないものが多く、これを”ウォーターフォール型”のスタイルで開発していましたが、トップゲートは今回のシステム開発を”アジャイル型”で臨んだからです。

「最初にきっちりと要件定義を行い、まとめ上げたドキュメントにしたがって開発するというスタイルをずっと貫いてきたわけですが、今回の出店戦略システムは、そもそも仕様や要件がはっきり決まっていたわけではありませんでした」(齊藤さん)

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「やりたいことのイメージは明確にありましたが、個人保険システム部含め Google Maps APIs の全機能を把握しておらず、すぐに要件を明確に決め切ることはできなかったのです。かつ、従来のシステムと違い、戦略を練るためのツールをどうつくればいいか、手探りの面もありました」(柏木さん)

トップゲートは大まかな要件を確認すると、Google App Engine と Google Maps APIs を活用し、人口動態や世帯収入などの統計情報や社内情報など大量のデータを地図上に重ねて表示することのできるシステムを提案しました。

「プロトタイプを見て、非常に驚きました。それまではほぼウォーターフォール型の開発しか経験がなかったので、こういうやり方もあるのか、との思いです。我々の要望が徐々に具体的な形となって見ることができるので、非常にわかりやすく、ぼやけていた要件が明確になっていきました」と柏木さんは言います。

「出来上がったプロトタイプを見て、新たな要望を盛り込んでもらうといったやり取りを何度か重ねました。トップゲートさんには申し訳なかったのですが、我々がアジャイル型の開発方式を勉強することにお付き合いいただいた形ですね」と齊藤さんは補足します。

Google Maps と GCP が高度な戦略立案業務を支える

5 か月後の同年 9 月には出店戦略システムの最初のバージョンが完成。まずは業務部で試験的に利用し、支社へ展開する際のマニュアルの作成など、準備を進めてきました。地図上にさまざまなデータを重ね合わせて表示するだけでなく、近隣拠点の抽出や、拠点間の移動距離や時間の計算、ストリートビューによって拠点候補の周辺状況を確認することも可能です。その他にもさまざまな機能が盛り込まれ、各拠点がそれぞれの状況やニーズに応じて自由に使いこなせるようになっています。

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「上司も、このシステムをさっそく使い始めて『これは面白い。画期的だ』と夢中になっています(笑)。開発メンバーも同様に感じたのですが、たとえば地図の上に地域の人口動態などの統計データを重ね合わせてみると、『こっちに出店したほうがいいのではないか』といった発見があるのです。以前は、支社から要請を受け、バラバラにある情報を突き合わせて確認するという流れでしたが、このシステムでは画面上であらゆるデータを統合的に俯瞰し、本社サイドから営業拠点に提案するといったこともできるようになりました」と柏木さんはシステムの導入効果を語ります。このシステム導入を機に、業務部や営業拠点がより戦略的に店舗立地や営業方針などのエリア運営策を考えられるようになったといいます。

「従来は 1 人で考えていた課題を、2 人以上で考えられるようになったということです。また、一拠点の事例をナレッジとして全拠点で共有できるようになったことも大きいですね」(柏木さん)

2017 年 5 月、99 の全支社への展開も始まりました。支社ごとにいる若手の IT リーダーが中心となってシステムの活用促進を図る体制も整っています。日本生命の出店戦略やエリア戦略が今後どのように進化していくか、注目を集めることでしょう。

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