[この記事は Meo Carbon Solutions 社の取締役 Dr. Norbert Schmitz 氏による Google for Work Official Blog の記事 "GRAS helps build sustainable and ethical supply chains using Google Maps APIs and Google Cloud Platform" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。]

今回は、Meo Carbon Solutions と Google for Work プレミア パートナーの WabionGRAS(Global Risk Assessment Services: グローバルリスク評価サービス)の開発に Google Maps APIs と Google Cloud Platform をどう活用したのか、Meo Carbon Solutions の取締役 Norbert Schmitz 博士に話を伺いました。GRAS は、農地の拡大が自然環境にもたらす生態学的・社会的リスクに関して信頼性の高い情報を提供するツールです。

欧州連合では、バイオ燃料を販売する企業は、その燃料(多くは農作物が原料)の生産が森林破壊や生物多様性の損失、炭素蓄積量(カーボンストック)の損失をもたらしていないことを示す証明書を取得しなければなりません。そこで、そういったデータを収集して視覚化し、信頼できる証明書の作成を支援する GRAS というツールを Meo Carbon Solutions 社は開発しました。

GRAS は、政府や非政府組織(NGO)だけでなく、企業や金融機関、個人にも情報を公開しています。例えば、ブラジルから大豆油を購入している米国の企業は、製造工場や農家の生態学的・社会的リスクの度合いを検証するために GRAS を活用しています。

多種類の複雑な情報を表示するには、複数の情報源から取得したデータを地図上に重ねて表示するウェブ アプリとするのが最も効果的であると判断しました。このアプリを使って、監査担当者は特定の地域の過去と現在の地図を比較したり、その環境の変化を基準にして、認定または却下の判断を下すことができます。

GRAS の構築は、Google for Work プレミア パートナーである ITコンサルタント企業 Wabion との協力のもとで行われました。いくつかの地図ソリューションを検証したのち、最終的には高い性能、複数のソースからのデータ統合の容易さ、API の柔軟性、確かなサポート、ユーザーコミュニティの大きさなどから Google Maps を選択しました。


GRAS のウェブサイトには、地図情報と、政府機関・NGO・その他のグローバルな数多くのデータベースからのデータが集約されています。サイトの基本となる地図の表示には Google Maps JavaScript API を使用しています。また、この API によって地図上に、農耕・森林破壊・社会福祉など 100 種類以上のデータを表示することができます。

ユーザーは自身のデータセットをアップロードしてそれを表示させることもできます。Google Maps Geocoding API で地図上の位置を検証できるうえ、Google Maps Places API のオートコンプリート機能で、確認したい場所の選択も簡単です。
GRASで表示したブラジルの生物多様性リスク


この GRAS を支えるのは Google Cloud Platform、具体的には Google App EngineGoogle Compute Engine です。そこに Google Maps APIs を加えることで、非常に大きなデータ量を含む 100 以上のレイヤーを擁した 10 テラバイトサイズの地理空間情報の処理を実現しています。

現在は、GRASを拡張し、地図上に表示するデータを拡充して、他の産業向けの情報の提供も開始しました。新たな情報として、生物多様性や土地利用の変化、炭素蓄積量などを加えています。また、Global Slavery Index(世界の奴隷的労働の調査結果) をはじめ、世界飢餓指数(Global Hunger Index)、飲料水と衛生設備の普及率を示す UNICEF の指数など、社会の健全性を評価する様々な測定基準にも対応できるようになりました。

当初の想定をはるかに上回る結果となった GRAS のウェブサイトは透明性と技術力を兼ね備え、食品・化学・エネルギーなど幅広い業界の方々にご活用いただいており、環境的・社会的に健全なサプライチェーンの運用に役立てられています。